視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
人間は一度にはほんの少しのことしか把握できない。私たちの目の前に見えるのは、目の前で、いまここで起こっていることだけだ。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
壁がない。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
少し立ち止まって、じっと目を凝らす。すこし遠いけれど、辛抱すれば、とらえるのは難しいことではない。じっとそこにあるものを見つめていると、すこしずつ慣れてきて、ここでどのように振る舞えばいいのか、どのような振る舞いを要求されているのか、おぼろげに受け取ることができる。
しんと静まっている。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪いまま進む。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
壁がない。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
少し立ち止まって、じっと目を凝らす。すこし遠いけれど、辛抱すれば、とらえるのは難しいことではない。さっきの場所にまた来たような感覚がするけれど、そうではないようだ。ひどい頭痛がして、これが、次に進むことや戻ることをむずかしくさせる。
大岩雄典
Solarisation
同
まず最初に、闇の中に沈んで目に見えない海面にいくつかの光の斑点が現れた。いや、それは光とは言っても、白っぽくぼやけた薄明かりの斑点で、波のリズムに合わせて揺れていた。それらは互いに溶け合い、伸びていき、最後にはこの幻のような輝きは水平線全体にまで広がっていった。発光はその強さを十五分くらいの間ずっと増していったが、それからこの現象は驚嘆すべき形で幕を閉じた。海が突然消え始めたのだ。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
逆順に辿れば元の場所に戻る、という空間に、あまりに慣れすぎているのかもしれない。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
壁がない。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
慣れに期待させられる。
ものを二度見ることとか。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
まばたきをした。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
もうさっきとは違う。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
しかし、実際には、この海が「生き物」であるのかどうかについては、まだ皆が一致しているわけではなかったし、それが理性を持っていると言えるかどうかについては、なおさらあやふやだったのだ。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
遠くから音が聴こえた。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
壁がない。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
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視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
壁がない。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
壁がない。
視界が悪い。
視界が悪い。
無茶をして離れてしまうと場所がわからなくなる。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
隣の部屋?
視界が悪い。
視界が悪いまま進む。
どこか開けた感触がしている。している、というのは、それが具体的に見えたり、それを何として認識したわけではないからだ。居間から台所へ移るような、たしかな感じはないが、ここはあそこではない、今はさっきではない、という考えが起こる。頭痛がひどい。
視界が悪い。
おそらくここはさっきいた場所からは少し先らしい。
差異を感じるから。
そう思える。
視界が悪い。
トムとジェリーのことを思い出す。
ジェリーの巣穴がどこに繋がっているのか、トムにはわからない。
ここは家じゃない。
壁がない。
全てが穴だ。
全てが穴?
そのとき巨大な黒い海の広がりとその上のからっぽな空いっぱいに展開していたのは、色彩の闘いだった――硬く、灼熱した金属のような、毒々しい緑色に輝く色彩が、抑えられた鈍い深紅の炎と、目も眩むような激しさで争っていたのだ。そして、海そのものは二つの対立する太陽の鉛版、水銀色と緋色の二つの溶鉱炉の照り返しによって引き裂かれていた。そのとき天頂にほんの小さな雲が一つ現れただけでも、空から差してくる光は波の斜面の重々しい泡とともに、信じがたいほど豊かな色彩を獲得し、きらきらと虹色に輝くのだった。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
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視界が悪い。
視界が悪い。
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視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
少し立ち止まって、じっと目を凝らす。すこし遠いけれど、辛抱すれば、とらえるのは難しいことではない。さっきの場所にまた来たような感覚がするけれど、そうではないようだ。ひどい頭痛がして、これが、次に進むことや戻ることをむずかしくさせる。
視界が悪い。
視界が悪い。
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壁がない。
視界が悪い。
視界が悪い。
そうすると、窓を覆うカーテンの輝きは、ナトリウムの炎程度のものになった。紙片を床から拾い上げ、ひっくり返っていないテーブルの一つにそれを置いて、私は読み進めた。テキストは一部が欠けていた。
視界が悪い。
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壁がない。
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肝心なところを通り過ぎた気がする。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
ずっとここに居ると思っているが、ずっとここを通っているだけかもしれない。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
対称体の海面下の部分が締め付けられ、巨人はゆっくりと上昇し始める。まるでこの惑星から外に投げ出されようとしているようだ。海の青みを帯びた灰色の表層が活発に動き始め、上へ上へと這っていって側面の壁に上り、壁を引きずり、凝固して出口をふさいでしまう。しかし、このすべても、奥深くで起こっていることと比べたら、取るに足らない。最初に形態創造の、つまり自分の内から様々な建築物を次々に示すプロセスがしばらくの間停止し、それから恐ろしい勢いで加速される。これまで滑らかだった動きが、猛烈な勢いで展開し始めるのだ。しかし、変化の速度が増せば増すほど、建築の材料そのものとその力学の変貌がはっきりしてくる。それは恐ろしく、嫌悪を呼び起こすような変貌だ。奇跡的にしなやかな平面がいくつも合わさり、そのすべてが柔らかくだらんとたるんで垂れ下がり、失敗をおかし始める――つまり、醜悪で奇怪な、完成していない形が現れるのである。目に見えない深みから湧き上がってくるどよめきや、うなり声はどんどん強くなっていき、まるで瀕死の苦しみに喘ぐ息によって吐き出されたかのような空気が、狭まっていく通路を擦り、ぜいぜいという荒い息も思わせる轟音を立てて通り抜け、崩れ落ちる天井を刺激して、言わば粘液からできた鍾乳石に覆われたぞっとするような咽頭を、その死んだ声帯をごろごろ鳴らす。そして見る者を一瞬のうちに覆うのは、この上なく激しい動きがさらに激しくなっていくにもかかわらず――これはまさに破壊の運動なのだ――すべてが完全に死に絶えたような感覚である。そびえ立つ建築物はいまにも下に流れ出し、まるで炎に包まれた漆喰のように崩れ落ちそうだが、いまやそれを膨れ上がらせながらも支えているのは、深淵から咆え声を響かせる暴風だけである。この暴風は深淵の何千、何万もの縦坑をすべて経めぐっているのだ。もっとも、まだあちらこちらに、全体の動きから切り離された無秩序な揺れや動きが残っているのだが、それもしだいに弱まって消え、しまいには絶えず外からの攻撃にさらされて、周囲を洗われた巨体は山のようにゆっくりと崩れ落ち、泡の渦巻く深みに消えてしまう。その泡は、巨人の誕生の際に見られたものと同じようなものだ。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
視界が悪い。
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視界が悪い。
視界が悪い。
壁がない。
なおも。
大岩雄典
Mute
2020, 3分ごとに鳴る鐘、その8回目だけの沈黙