トランプの再発明に立ち会う
トランプがあるから、ババ抜きも、神経衰弱も、ポーカーも作られました。しかしポーカーからトランプを作ることはできません。トランプは多彩な遊びかたの土壌となる条件です。
トランプを作るにはどうすればよいか。「5種類のマークと数字が10まである」カードの束を作るだけでは、トランプにならない。かずかずの具体的な遊びかたの明滅と、それを共有するひとが、トランプをトランプにします。
テーブルに誘う
テーブルを並べる
「テーブル」は文字通りの机から連想した概念です。ゲームを遊ぶには机が必要です。展覧会「実効|Work」では、作品を囲んでみるひとつひとつの機会をテーブルと呼びます。
《カードゲーム》の所有者(ホルダー)はいつでもテーブルを用意できます。人を誘って鑑賞がはじまります。毎回なにか発見があるでしょう。この具体的な成果を持ち帰り、次の機会に備えます。かずかずのテーブルの集合とネットワークがこの展覧会です。
作品を探検する
作品は広大な空間のようです。プレイするたびに、異なる鉱脈にあたります。鉱脈を掘りつづけることは作品の制作であり、観賞です。見つけたものがあればテーブルに集めます。
呪文で呪文をつくる
《カードゲーム》は呪文のゲームです。読み上げれば発動します。「山札をすべて捨てる」とよめば山札は消えてなくなります。「ゲームを終える」とよめばゲームが終わります。「負ける」をよめば負けます。基本の呪文は揃っていますが、呪文は言葉です。文脈と必要、少々の心得があれば、別の呪文が作れます。読み上げれば発動します。
テストプレイで制作する
作品は制作が「完了」したものではありません。鑑賞はただ眺めることではなく、作品の実験、つまりテストプレイです。そのたびに、知的な、美的な、具体的ななにかを作品で収穫できます。
展覧会「実効|Work」は、作品《カードゲーム》やそれを共有する環境を、無数にテストプレイすることで作られる展覧会です。作品は鉱山であり、つるはしでもあります。テストプレイのたびに会期と会場はあり、主催やアーティストの役割さえ変わります。
「実効|Work」は、展覧会がもつ要素を、別の形でとらえ直す実践です。
分散型自律展覧会
展覧会「実効|Work」は、一箇所に囲まれたものではありません。複数の、散発する会場をもちます。それぞれの会場は、《カードゲーム》というひとつの作品に、異なるアプローチをしています。探究、実験、制作、観賞、共有、試供。
《カードゲーム》はマルチプル(複製)の作品で、誰でも・どこでも所有することができます。作品があれば、それを囲んでみる「テーブル」があります。このかずかずのテーブルの集合とネットワークがこの展覧会です。