OPEN SITE 5
大岩雄典「バカンス」|Euske Oiwa Vacances
会期|2020年11月21日/土曜/- 12月20日/日曜/
開館時間|11:00-19:00
休館日|11月24日、11月30日、12月7日、12月14日
会場|トーキョーアーツアンドスペース本郷
(東京都文京区本郷2-4-6)
御茶ノ水駅(JR中央線・総武線・東京メトロ丸ノ内線)、
水道橋駅(都営地下鉄三田線・JR総武線)、
本郷三丁目駅(都営地下鉄大江戸線・東京メトロ丸ノ内線)
各駅より徒歩7分
※会場に駐車場はございませんので、近隣の有料駐車場などをご利用ください。
入場料|無料
主催|公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペース
URL|www.tokyoartsandspace.jp
「OPEN SITE 5」オープニング・トーク
日時(終了)|11月21日 / 土曜 / 16:00-17:00
ゲスト|畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員)
登壇|大岩雄典、権瓶千尋、森岡美樹(OPEN SITE 5 第1期 参加作家)
オンライン記録配信中|YouTube
バカンス。
このバカンスに、解釈を与えなければならない。
そう話しかけられて、ここでも彼に会ってしまったと思う。そう、そう、この声! 眼とちがって、耳は開け閉めの都合がつかない。細身の賢しらなふうの青年の、すこし尊大にわきまえた声が、自然に耳に入ってくる。〔ひどく咳き込む〕
「解釈はいつも、本質的に、読解ではなくて聴取である」
すこし待つと、その引用はジャック・デリダでと青年はいう。書名と訳者、出版年まで丁寧に教えてくれる。手荒さと裏腹な、活喩の几帳面さは、彼の手なみなのだ。何はさておき「聴取……ですか」と相槌をうつ。
バカンス[vacances]は〈何もない〉を意味する。
ええーバカンスって長期休暇のことじゃないんですかと訊くと、予定が何も入っていないのを即ち指しているのだ、という。こうした社交の場面で気の利いた手品のように話すことが、彼の日課だ。
わたしたちにはバカンスがあった。いまもあるようにさえ思う。
口説かれて、情けなく苦笑いを返す。たぶん、こないだ過ごしたホテルのことを話したいのだ。わたしたちのあいだには「何もなかった」し、これからも「何もない」のに。遠回りに話すのは、プレイのうぶな癖。彼はどこからともなく紙を取り出す。すごい手品だ。この紙はやや大ぶりで艶だち、いつも廃棄に困る。開くと……
vacances [仏]:長期休暇。
vacancy[英]:空室;空位;放心;空間;空虚。
耳は何もない空洞だ。外側につうじる、内側の何もない空洞。何もない空間にこそ音が響いて聴取される。わたしたちのだらしなく開けっぱなしの耳に、わたしたちが毎日息を潜めて閉じこもっていたあの部屋に、がらんどうの展示室に。
果てしないバカンスに、声はいかにも自然に[comme naturellement]響いている。わたしたちの耳のなかに〈声〉は遍く反射して、立ち尽くすべき位置に、距離にすべて定立させる。いかにも自然に聞こえたまえ。つまりこの部屋、このバカンスにも、いま………
彼が声を響かせている。
1993年生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程在籍。美術家。インスタレーションとフィクションを制作・研究。物語論や言語哲学、ヴィデオゲーム研究への関心から、時空間とその経験のもつ形を、美的・哲学的・政治的な問題意識から考え、作品やテクスト、レクチャーなどの形で上演する。
主な展示に、個展「Pleasure」(2015 / トーキョーワンダーサイト渋谷 / TWS-Emerging 2015選出企画)、グループ展「Surfin’」(2017)、二人展「明るい水槽」(2018 / BLOCK HOUSE / 永田康祐と)、個展「スローアクター」(2019 / 駒込倉庫 / 企画構成:砂山太一)、個展「別れ話」(2020 / 北千住BUoY / 岸井大輔企画「形」招聘展示)。主な展示企画に「Emergency Call」(2020 / 電話回線)。
主な受賞に、第4回CAF賞(2017 / 代官山ヒルサイドフォーラム / 現代芸術振興財団)海外渡航費授与賞、第16回芸術評論募集(2019 / 美術出版社)佳作入選。『美術手帖』『ユリイカ』『早稲田文学』などに論考を寄稿。
別れ話 / 2020 / インスタレーション、戯曲、詩、会話 / 写真:屋上
windows / 2020 / ループ映像、二つの怪談
スローアクター / 2019 / インスタレーション、物語 / 写真:野口羊
漫才
キヨスヨネスク|Yonesuku Kiyosu
1992年生まれ。俳優。多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科卒業。劇ユニット「humunus」結成。声と身体、風景との関係をテーマに活動。主な出演作に、KUNIO14「水の駅」、円盤に乗る派「清潔でとても明るい場所を」、ホモフィクタス「灰と,灰の灰」、humunus「海足を踏めない」など。
矢野昌幸|Masayuki Yano
1989年生まれ。俳優。山縣太一氏に師事。神奈川県川崎市出身。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。主な出演作は『ギニョル』(作・演出・出演:矢野昌幸)、オフィスマウンテン『能を捨てよ体で生きる』(作・演出:山縣太一)、夏の日の本谷有希子『本当の旅』(作・演出:本谷有希子)。
撮影|屋上http://okujoh.space
録音|増田義基
撮影会場協力|北千住BUoYhttp://buoy.or.jp
稽古会場協力|WALLAhttps://walla.jp、屋上、北千住BUoY
音楽
作曲家・サウンドデザイナー。1996年生まれ。東京藝術大学音楽環境創造科卒業。器楽演奏や合奏、環境音の録音、プログラミングによる電子音響の生成などの手法を組み合わせ、音楽の制作や映像や空間のサウンドデザインを包括的に行う。現在はGATARI.IncにてARでの空間音響表現のプロダクション制作に参加。
家具
1994年京都府生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業、同大学院美術研究科デザイン専攻在籍。自然に内在する普遍の価値を主軸に、感情喚起的なツールとしての家具の在り方を模索・造形している。
イベント「大岩雄典と布施琳太郎:インスタレーションや執筆や二人が前提としていることについて」
アーティスト。1994年生まれ。現在は東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程に在籍。洞窟絵画とiPhoneの発売以降の社会の分析に基づいて、絵画やインスタレーションなどの作品制作、展覧会の企画、運営、キュレーション、そしてテキストの執筆を行っている。近年の企画に「隔離式濃厚接触室」(ウェブページ、2020)など。
福尾匠|Takumi Fukuo
1992年生まれ。現代フランス哲学、批評。著書に『眼がスクリーンになるとき:ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社、2018年)がある。
デジタル写真論、現代美術を中心に執筆、企画。2017年から美術系同人誌「パンのパン」を発行。2018年に『インスタグラムと現代視覚文化論』(ビー・エヌ・エヌ新社)を共訳編著。
大岩雄典|Euske Oiwa 略