大岩雄典個展「バカンス」関連 漫才公演

「エクストラバカンス」|Extravacances

漫才|キヨスヨネスク 矢野昌幸

作|大岩雄典

公演日|2021年1月24日/日曜/

昼の部|13:30-

夜の部|16:30-

※入場時間は予約後にメールにてご案内いたします

会場|北千住BUoY (東京都足立区千住仲町49-11) 地下

北千住駅(JR常磐線・東京メトロ千代田線・日比谷線・東武スカイツリーライン)より徒歩10分
千住大橋駅(京成電鉄本線)より徒歩6分
※会場に駐車場はございません。公共交通機関などをご利用ください。

席料|2000円 *昼の部・夜の部通してご観覧いただけます

満員|100席

予約|Peatix(当日支払)

本公演は、2020年11月〜12月にトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)本郷で開催された美術家・大岩雄典の個展「バカンス」のインスタレーション作品に映像の形で含まれていた、キヨスヨネスク・矢野昌幸による漫才のライブバージョンです。作品に含まれていた2つの漫才「プロローグ」と「バカンス」、その幕間に新作短編「エクストラバカンス」を上演します。

映像で含まれていた2つの漫才はいずれも、大岩の書いた原作を2人が演じたものですが、その収録時間の半分以上は、2人のアドリブで構成されています。2人のアドリブは稽古の時点から、演じるたびに大きく変化し 原作戯曲を繰り返し、しかし毎回異なる形でプレイするように、この漫才は作られました。

大岩のインスタレーション「バカンス」は、どこからか聞こえてくるノイズをモチーフとした作品です。潮騒、幻聴、電話、エウレカ。わたしたちの聴いているわたしたち自身の声は、本当にわたしたちの口から頭の中から発された声だろうか。漫才でボケているのは誰だろうか。ツッコミはどこから聞こえてくるだろうか。

閉じ込められた室内に聞こえてくる声の、信じかたか訝りかたをめぐる上演のような気がしてきました。少なくともそんな声が。

そのたびごとにただ一回きり、ライブ版「バカンス=空虚」をご覧ください。

バカンス。
このバカンスに、解釈を与えなければならない。

ま、ま、ま……バカンス、うん自慢じゃないんだけどまあバカンスだね、うん、ま、こうさ、世界の喧騒から離れて。ああなるほどね、なるほどね、せっかく静かな旅に出て、その旅先の部屋で、盗言器がということでございますね。

「解釈はいつも、本質的に、読解ではなくて聴取である」

そうなのよ、鳴るの。鳴るんだ。うん、鳴る。鳴る。鳴る。 まじで、ごめん、鳴るというか、人の声で喋る……でも僕は「鳴る」って言ってる、まあどっちでもいいんだけど。え、一体誰が喋ってる声なのそれは。それはねその時次第だね。

バカンス[vacances]は〈何もない〉を意味する。

キヨスさんの時もあったよ。え俺が喋ってるの。うん。なにそれ。だからキヨスさんのときはキヨスさんだね。なにそれ……不気味ーーーーー。でしょーーーーー。不気味の谷だあ。不気味の谷だ。だめだよそこ先行っちゃ危ないよ。

わたしたちにはバカンスがあった。いまもあるようにさえ思う。

だからさ、もう部屋からあんま出たくないのよ。そうねえ。外で聞こえるより部屋の中で聞こえるほうがマシじゃない? たしかに。家の外のことは中に持ち込まないみたいな。そうね大事大事、ちゃんと分けるみたいな。まあそうはいっても怖いからさ、もうさ、眠れないわけよ夜も。大変だなそりゃ。だから盗言器の正体を明かしてやりたいのよ。

vacances [仏]:長期休暇。
vacancy[英]:空室;空位;放心;空間;空虚。

耳は何もない空洞だ。外側につうじる、内側の何もない空洞。何もない空間にこそ音が響いて聴取される。わたしたちのだらしなく開けっぱなしの耳に、わたしたちが毎日息を潜めて閉じこもっていたあの部屋に、がらんどうの展示室に。

果てしないバカンスに、声はいかにも自然に[comme naturellement]響いている。わたしたちの耳のなかに〈声〉は遍く反射して、立ち尽くすべき位置に、距離にすべて定立させる。いかにも自然に聞こえたまえ。つまりこの部屋、このバカンスにも、いま………

あれ、何か言った? ……ほらほらほら、盗言器だよ!

漫才


撮影:屋上、録音:増田義基

キヨスヨネスク|Yonesuku Kiyosu

1992年生まれ。俳優。多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科卒業。劇ユニット「humunus」結成。声と身体、風景との関係をテーマに活動。主な出演作に、KUNIO14「水の駅」、円盤に乗る派「清潔でとても明るい場所を」、ホモフィクタス「灰と,灰の灰」、humunus「海足を踏めない」など。

矢野昌幸|Masayuki Yano

1989年生まれ。俳優。山縣太一氏に師事。神奈川県川崎市出身。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。主な出演作は『ギニョル』(作・演出・出演:矢野昌幸)、オフィスマウンテン『能を捨てよ体で生きる』(作・演出:山縣太一)、夏の日の本谷有希子『本当の旅』(作・演出:本谷有希子)。

稽古会場協力|未定

大岩雄典|Euske Oiwaeuskeoiwa.com

1993年生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程在籍。美術家。インスタレーションとフィクションを制作・研究。主な展示に、個展「Pleasure」(2015 / トーキョーワンダーサイト渋谷)「Surfin’」(2017)「スローアクター」(2019 / 駒込倉庫)「別れ話」(2020 / 北千住BUoY)「バカンス」(2020 / トーキョーアーツアンドスペース本郷)。批評やレクチャーなども。


別れ話 / 2020 / インスタレーション、戯曲、詩、会話 / 写真:屋上